人材育成

熊本県測量設計コンサルタンツ協会 藤本祐二会長 インタビュー

(一社)熊本県測量設計建設コンサルタンツ協会の藤本祐二会長は、地場コンサル業者の事業量確保、人材育成などの課題解消に奮闘する。昨年、熊本を襲った熊本地震直後には、迅速な災害復旧に向けた活動に業界一丸となって取り組んだ。そこで表面化した問題点は何だったのか。測量設計業界の今を見つめながら、業界が今後取り組むべき方向性を模索する。

公共事業

公共予算増で民間需要も増加に

事業量確保については、国・県・市に対して定期的に行っています。九州地方整備局とは、定期的に意見交換もしています。農政関係は別に九州・沖縄土地改良測量設計技術協会とか、土地改良事業協会とかがあってそちらで対応しています。農政予算は民主党政権時に大幅削減された経緯がありますが、土地改良事業により基盤整備を行っていかないと生産性向上はありえないと危惧しているところです。施設も老朽化しており、耐用年数が過ぎた施設の修復が求められています。予算がないことからそのままにされていることが残念です。
公共事業予算は、社会保障費に比べるとずいぶん小さいと思うんですけど。かつては14兆円ぐらいあったのが、今は6~7兆円でしょ。それで下げ止まって横ばいで。公共事業予算に応じて民間の投資額も反応を見せますよね。国が公共事業費を増やせば、もっと民間需要も増えると思います。
ある時期から公共事業悪玉論になって、不景気になってしまって。それからじゃないですか。デフレがず~っと続くのは。欧米諸国が一定のGDP比を公共事業費に充てており、それが健全な投資額だ、みたいな。でも実際にその通りにしているのは日本だけ。欧米はそれでいいかもしれないけど、日本、特に九州では台風や地震があったりして、比較対照は成り立ちません。中国を見てください。地震がないから高速道路の橋脚がものすごく細いので、整備率がどんどん伸びます。高速鉄道の整備率とかとんでもありません。


災害対応

人道支援という位置づけも

今、災害の規模がかなり大きくなっている現実があります。一つの県単位で対応できる限度というものがあるので、九州7県で大規模災害時の広域連携協定というものを結んだわけです。でも実際のところはどうか。昨年の熊本地震を例にとってみますと、とても我々県内の業者では対応できない状態でしたが、初期対応には他県からは来られない。受け入れ態勢ができていないんです。災害復旧に関わる測量設計の費用については、現在解決の糸口を探しているところです。災害復旧の仕事は元々、見切り発車的な部分が結構大きいものですから契約は後回しになりがちです。仕事ではない部分、例えば社会的責任とか、使命とか。「初期対応ぐらいは、自分たちでしなければならない」という気持ちがあります。ボランティアも次々に入ってきて、人道支援という位置づけで対応しなければならないのかと感じているところです。
もっと突き詰めると、東北の震災があって、その地域全体がやられてしまって、誰も支援に行けなかった現実があったんです。そんな事態を想定しながら、我々の役割の中で、支援にスムーズに行けるようにしないといけません。全国測量設計業協会連合会でも独自に災害対策本部を設けて対応しようという動きがありました。熊本地震の際にはどうだったか。残念ながら上手く作用しませんでした。行政も含め司令塔があちこちに出来上がって。情報の一元化が必要でした。引き続き考えていかなければならない課題でしょう。

業務拡大

国も通常業務への参入に配慮して

国の仕事に参入していくためには、災害復旧の対応というのは一つの手ではあるんですよ。総合評価方式の場合、業務実績がものをいうでしょ。県・政令市の実績は類似でしかありません。工事の場合は、ランクが分かれていますよね。AとCは戦わない。我々はランクがないから、総合評価の中での土俵しかないので、そこで全国大手と戦うことになります。今お願いしているのは、地域コンサル向けの業務を発注するならば当該県に本社のある会社がとれるような仕組みをつくってほしいということです。それがだめなら全国や海外に事業を展開している会社と我々地場コンサル会社をランク分けして欲しいと。大手のコンサル業者は国の業務実績が山ほどあるわけでしょ。それこそ表彰を受けているような優秀な技術者がたくさんいるわけですよ。だから、作業班体制とかを出したときに、それに特化した技術者が配置されますから、まず勝てませんよ。全国を股にかける大手コンサルがそういう仕事にしか応募しないんだったら良いですけどそんなことはありません。それは発注する側がちゃんと棲み分けをやるべきだと思うんです。
災害時には大手コンサルも被災地に入ってくるけれども儲かる仕事が主なターゲットです。それこそありきたりな人海戦術が必要な仕事をやるのは我々地場のコンサルです。でもそんなありきたりな仕事が一番大切なわけじゃないですか。我々、地場コンサルは、通常の仕事をお願いします、という前に、災害復旧に関わる仕事は精一杯頑張ってやっています。「どうでしたか。これだけ対応できたじゃないですか」と。でも通常の仕事は全然参入出来ていません。「我々がこれだけやったから出来たのでしょう」と言いたいわけですよ。もう少し我々で出来る仕事は参入できるようにしてほしい。何でもかんでもという話ではないんですから。
改正品確法でも謳っている通り、災害復旧対応を含めて地域の人材を確保するとあります。災害復旧は時間との勝負で大量に人が要るわけだから、その人たちを災害のためだけに確保しておく訳にはいきません。通常の仕事があってはじめてできる話です。だからこそ災害復旧は我々の仕事で、地域の地場のコンサルが対応しますということになります。それなら平常の業務も地方のコンサルに配慮してくれということです。
我々の地道な努力も必要で、要望も行っています。国土交通省の出先機関で個別の災害協定があるのですが、その中で地元の業者を増やしてもらいました。ただ、この協定は必ず仕事があるというのではなくて、災害が発生した場合は、事務所の要請に応じて対応するというものです。もちろん価格等の提示はなく、やった仕事に対して見積もりで契約するという協定なんです。それまでは地場のコンサルは2~3社程度だったのですが。意見交換の時に国の仕事に参入するんだったら、地場でまずやれるのは災害対応が一番じゃないかということになって。行ってすぐ現場に入らないといけないわけですから、県外の人じゃ無理でしょ。だからそこからという話が出て、意見交換の後、皆で災害協定の公募に応募したわけですよ。昨年の2月末頃10数社が協定を結びました。そして地震が発生したんですよ。それで出先の所長さんにはものすごく助かったと認識していただきました。我々もものすごく実績を積むことが出来ました。お互いに良かったわけですよ。結局、災害対応の局長表彰にもつながりましたし、総合評価の加点にもなりました。そうやって一つずつレベルアップ、ステップアップをしていく手順というのは必要なんですよね。

人材育成

インターンシップ拡大へ

測量設計業の予算の現状からいうと、ずーっと横ばい状態できて、民主党政権から右肩下がり、自民党が政権を奪取し、その後、本予算、補正予算とも下げ止まったままとなっています。一方で、事業量確保も大切なことですが、人材確保も同じように重要なことです。今、将来なりたい職業はユーチューバーなんでしょう? いかに楽して稼げるかみたいな話じゃないですか。私が別に経営しているホテル業のスタッフの求人もなかなか集まりません。この問題は測量設計業や建設業だけではなく、全産業の課題でもあります。
若い人材を集めるにはインターンシップの受け入れが一番じゃないかと思っています。今までもやっていたけど、もっと拡大したほうが良いのではないかと。皆さん知らないんですよ。「どういう仕事なんですか? 何をすればいいんですか? 将来性はあるんですか?」みたいな。何年か前にありました高校生向けの「建設産業ガイダンス」のような機会が増えるとありがたいですね。逆に測量設計業界が頑張って自前でやらなきゃいけないのかと感じています。レベルが幅広くて大変なんですけど。何が良いかは別にして、受け入れ態勢を考えていかなければならないと思います。建設産業に対する批判の声が多くて、どんどん人気がなくなって、学校の学部・学科が無くなってしまうかもしれません。

資格取得講習会で若手技術者を育成している。写真はRCCM講習会。年数回開催しており、協会員技術力向上で事業量確保を目指す

  • 資格取得講習会で若手技術者を育成している。写真はRCCM講習会。年数回開催しており、協会員技術力向上で事業量確保を目指す

人材確保

就労環境を向上。単価アップがカギ

私が九州測量専門学校を卒業したのが平成2年。その頃は測量科に70数人がいました。土木建設科にあっては1、2年合わせ200数十人がいたと記憶しています。今、コンサル業界にあっては、人手が足りない状況が続いており、若い人材を必要としています。この業界に若手の入職を促進していくには、就労環境をよくすることが必要不可欠になっています。そのためには仕事の単価を上げることが重要です。
国土交通省は、積算に技術者日額単価を適用することを目的として、企業の賃金台帳などの実態調査を行っています。その金額を見てみると、公共工事がピークだった平成10年頃を100とした場合、これまで最低で60まで下がって、現在は80位まで持ち直しているのではないでしょうか。これは諸経費、技術者経費、技術者の経験などを適正に反映した実態調査ではないことなどの問題があることも要因ですが、何より価格競争をすれば設計単価が下がるのは必然、という仕組みを理解しなければなりません。我々が技術者の処遇を良くしようと努力すればするほど、そのために仕事量を増やそうとすればするほど、設計単価が下がる負のスパイラルに巻き込まれてしまうんです。
そうした中、国土交通省は、生産性革命元年としてi―Constructionを打ち出し、生産性向上と労働環境の改善を融合した新たなプロジェクトを打ち出しました。実際、3次元データをもとにICT土工を行っており、成果を収めているのは確かです。ただICT土工で使われている3次元データは、そのために設計してある施工図なので、元々は3次元ではありません。それを3次元に変えるという無駄が出てきます。我々が直接、3次元データによる測量・設計をして維持・管理まで役立てるようにしなければ、本来の生産性向上にはつながりません。そうして事業量を確保しながら、もちろん利益が出るように発注していただく。そこは改正品確法でも謳われていることですから。

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