熊本地震

熊本県 土木部 成富 守 政策審議監

熊本地震の復旧・復興を加速するために熊本県内の建設業は日々、全身全霊を掛けて仕事に打ち込んでいる。一方で、災害復旧工事は施工条件が悪く、不調・不落が後を絶たないという現実がある。このような状況にどう対処していくのか。熊本県土木部の成富守政策審議監に現状を聞いた。

熊本県 土木部 成富 守 政策審議監

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適正な予定価格・設計変更で不調不落解消

平成28年度の熊本県が執行する入札で13.9%にあたる379件が不調になっています。そのうち29年10月末現在で約7割の267件が契約を終えていますが、残る3割の112件が未契約となっています。その取扱いはいかがでしょうか。

12月上旬に被災地の熊本、上益城、阿蘇の振興局と未契約分の今後の取扱いについて意見交換しました。阿蘇では80件程度が未契約だったのですが、11月末現在ではそのうち約5割が契約になっています。今後、年度末に向けての受注環境を考慮し、既発注工事に追加工事として変更契約を検討したり、発注時期を来年度にしたりと工夫するなどいろいろな手法を検討しています。熊本土木事務所では、30件程度があったのですが、発注ロットの拡大などを考えており実質は10件程度が残っています。
災害関連工事の土木一式工事では、A2ランク対象工事で1回目を管内業者を対象に一般競争入札で実施し、不調になり2回目を全県の業者に拡大して再入札をしても不調になるような案件もあり、今後の対応を検討する必要があります。

不調となる工事はどのようなものですか。

土木一式工事で、まず熊本土木管内ではBランク及びCランクの工事です。阿蘇土木管内では、A1、A2ランクの工事となっており、施工条件が厳しい工事なども不調が多いです。施工条件が厳しい工事については、より適切な予定価格の設定(復興係数や復興歩掛などの活用)、適切な設計変更などをきちんとおこなっていくことが必要と考えています。一方、現行の予算制度などの下では、予算は明許繰越、事故繰越という制度を活用しても予算化された年度を含めて3カ年度で終わらないといけないといけませんので、何とか早く着工できるよう柔軟に時機を逸することなく入札制度の見直しなども行う必要があります。

砂防や宅地耐震化事業が遅れているようですが。

県工事では、災害関連緊急事業として採択された総額200億円の砂防、地すべり対策、急傾斜地崩壊対策の事業等については、9月末時点での契約率は8%程度でした。これは用地取得を行っていたためであり、11月時点で砂防事業は約9割、地すべりについては全て完了、急傾斜地崩壊対策事業は約3割と用地取得も進み、発注率も約36%となっています。年度内にはなんとか全ての工事が契約できればと考えています。
市町村工事では、約100億円の宅地耐震化事業の9月末時点の発注率は約4%でしたが、10月末時点では約25%の発注率となっています。こちらも年度内に発注できるよう関係市町村を支援していきたいと考えています。

熊本県不調不落発生状況・契約状況

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市町村の不調不落状況

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復旧・復興進捗状況

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「専門工事業者不足」 今後の大きな課題

人手不足も顕著のようですが、震災関連工事の施工確保のための有効な対策はあるのでしょうか。

「担い手3法」が施行されたように、建設産業の担い手不足は喫緊の課題でありました。そのような中にこのような大規模な災害が起こると、これはという有効な手段がないというのが現状ではないかと思います。まずは県内の全ての建設業者で今回の災害を対応すべく、入札参加資格の地域要件を拡大してきました。発注ロットの拡大、入札参加資格要件として配置予定技術者の施工実績なども技術者の需給動向をみながら柔軟に緩和するなどの措置を講じています。
さらに、被災地以外の地域からの参加を促進するため復興係数の更なる引上げを行いましたし、地域外からの労働者確保に要する間接費(旅費、交通費、宿泊費)を設計変更でみるようにしています。個別ではありますが、交通誘導員の確保についても関係機関で情報を共有し課題の解決に向けた会議を立ち上げたところです。発注したけど工事に着手できないということがないよう施工現場の状況を踏まえることも重要です。このように全ての県内業者での対応でも難しい場合には、県外業者の活用も考えていかなければならないでしょう。

熊本県の建設資材需要価格・建設労働者需要動向(復旧事業円滑化官民ネットワーク 報告書11月版)

  • 熊本県の建設資材需要価格・建設労働者需要動向(復旧事業円滑化官民ネットワーク 報告書11月版)

専門工事業者の不足に至っては震災関連工事の進捗に相当なダメージがあるように思われますが。

型枠工、左官、とび工、鉄筋工などの専門工事業者の需給見通しでも「困難」、「やや困難」となっています。震災関連工事の進捗にかなり影響してくるのではないかと危惧しているところです。本当は、発注機関である国、県、市町村、できれば民間も含めてですが、建設労働者や建設資材の需給動向を踏まえて発注調整ができればいいのですが、現実は現行の予算制度の下、さらには被災地の早期復旧という命題に対して調整ができていないというのが現実です。今後の大きな課題と考えています。

工事代金の不払いなど業者間のトラブルに関するものが増加傾向にあるようですが、熊本県としての対応はいかがか。

発注者、受注者が改めて施工体制の確認をすることが必要と考えています。建設業協会では改めて会員に対して、施工管理の徹底、下請代金の支払い等について周知徹底されています。県としても、建設業関係団体、市町村に対し、施工体制の確認や下請契約及び下請代金支払の適正化について周知しています。建設業協会に対しましては県内の各支部を回り、直接説明し周知徹底を図ったところです。下請代金の未払いなどの相談については、相手方や元請負人、関係者に対し解決に向けて助言、指導をおこなっていくことにしています。

県内建設業者の力 最大限活用  発・受注者が連携し復興へ

復旧・復興の今後の展望をお願いします。

ちょっとデータは古いのですが、平成29年9月末現在で、県、市町村の災害復旧事業及び災害復旧関係事業の発注率は約45%、完了率は約13%です。現行の予算制度の中では予算化された年度から3年度内に終わらないと、その終わった分までしか予算は使えません。いつまでも予算が使える訳ではありません。このような制約の中で、発注者である県、市町村は、受注者である建設業者の資機材や建設労働者の需給動向を踏まえ、しっかり連携して発注していくことが課題になっていくと思います。
熊本地震から1年8か月が過ぎました。これからが本当の山場と考えています。県内の建設業者の力を最大限生かし、発注者及び受注者がしっかり連携すればこの未曾有の被害をもたらした熊本地震からの早期復旧・復興ができると信じています。